前回記事
「北参道とご神木〜S山」から続き

すれちがうとき、お互いに挨拶をするのは山道の常識ですが、
このときはどういうわけか、挨拶だけでなくいつのまにか話が弾み、
坂道の途中で二人して立ったまま、荷物もしょったまま
ずうっと話しこんでしまいました。
その方、Iさんは、さっき大とちの木があったところ、
安住坊の管理をなさっている方だったのです。
管理といっても、お寺に委託されているわけではなく、篤志で。
週に何日か泊まりがけでいらっしゃっているそうです。
ふだんは東京で、TV番組制作の関係の会社を経営されているそうで、
とてもスマートで、都会的な感じの方です。
ご出身は北海道だそうで、S山の坊のひとつを管理することになるとは
思ってみても不思議なことで
でも、これもご縁というものかもしれませんね、と仰っていました。
古くなってかなり朽ちていた安住坊の小屋を建て直すために
建材を一本、一本、背負って登って、ご自分で立て直し、
離れた山腹の水源から飲み水をずっと引いてきて、
ここを通って上り下りする参拝の方達にお茶をふるまっていらっしゃるそうです。。
安住坊のIさん。許可をもらって掲載。

そのときも、「今回は良いお茶を持って来たんですよ。」といって
「ごちそうするから、ちょっと戻りましょうよ。」と、繰り返し誘っていただいて。
・・また登りなんてトンデモないっす〜へろへろっす〜・・・とか思ってたのですが
「
山の水で入れると、凄くおいしいんですよ〜」という言葉につられ
おいしい抹茶が飲みたい一心でまた登ることに。
Iさん、お誘い上手です・・・^―^;
一緒に登りながら大とちの木の話になりました。
あの木を見たとき、「人間の体」を感じたんだ、という話をすると、
「あの木は、「健康」を守ってくれる木なんですよ。」と仰ったので驚きました。
何年も皮膚病で苦しんでいた人が、あの木に病気が治るように願をかけたら
なんと1ヶ月ですっかり治ってしまったそうなんです。
その方は感謝のしるしとして、大とちの木の根元に、水神さまのお社を喜捨されたそうです。
「あのとちの木は、ものすごい量の水を吸い上げていてね、
木の幹に耳をあてると、水を吸い上げてる音がよく聞こえるんだよ。
まず、あの木に両手で抱きついて、木のいのちを感じてみてね。」そういわれたので、お茶を入れてくださってるあいだに
木のところに行って、両手を拡げて、耳を幹にくっつけてみました。
「・・・・・」
あれ・・・?
何にも聞こえません・・・・?あれ???
とりあえず、Iさんから教わったやり方で、願をかけてみました。
木にお願いしてから、木の周りをある回数、廻るのですが、
巡り終わろうとしたとき、わたしの胸の中に、何かの感情がこみあげてきました。
それは
「切ない」「哀しい」といったような感じのものでした。
胸に切なく哀しく響いてくる何かの想い。目を閉じてその想いをじっと感じていると涙が浮かんできました。
病気を癒す力の木なら、元気いっぱいの明るいパワフルな感じかと
先入感を知らないうちに持っていたのですが。
「肉体を持って生きる」というのは、哀しいことなのかもしれません。そして、涙目でちょっと鼻をぐずぐず言わせながら
もういちど幹に耳を押し当ててみると、
・・・ああ、遥か遠くで水の音がしています・・・・それは、ずっと遠い、たとえば
地下深くに流れる川の音を聞くような感じ。
でも、「流れ」なんて悠長な音ではなくて
ざーっという激しい音をたてながら
ものすごい速さで、ものすごい量の水が流れていくのが聞こえます。
これがとちの木が水を吸い上げている音なら
どれほど大量の水を吸い上げているのか、ちょっと想像できないくらいです。

「水の音、すごいですね・・・・!!」
「
すごいでしょう。だからね、いつも来ると、あの木の周りにヤカンで何杯も
水をかけてやってるんだよ。「でも、あなたは聞こえる人なんだね。聞こえない人もいるんだよね。」
・・・聞こえてヨカッタです〜。 ^^;
もう帰り道で、急ぐ用事もなかったので、
Iさんや、安住坊に寄っていらっしゃる皆さんとお話しながら
結局何時間も腰をおちつけてしまいました。
S山ならではの不思議な話をいっぱい聞いたりして。
もうなんかすごく居心地がいいんですよ〜
そして、夕方、ちょうど降りてきた方にIさんが頼んでくださったので、
身延まで同乗させていただいて、とってもスムーズに帰ることができました。
S山のご縁って絶妙に素晴らしい。と思った今回の参拝登山でした。
御抹茶とおもてなし。豪勢です。